JunkJunk Column

ジャンクジャンク・コラム 2005.01

オークションでお宝を落札!

 いったい、いつの頃からそこに座るようになったのか。私たちがメーン州からミネソタ州に移り住んで以来、気づいたときにはちゃっかりと番号札を握りしめ、私たちはオークションハウスの中列左手の椅子に座るようになっていました。前回のコラム欄ではアンティーク・ディーラーの仕入れ先として「オークション・ハウス」の存在を挙げましたが、今回は私たちが定期的に参加するオークションについてお話します。

 日本で海外のオークション・ハウスを想像するとき即座に思い浮かべるのが、ロンドンやニューヨークにあるサザビーズやクリスティーズではないでしょうか。しかし、ここミネソタのオークションは少々、勝手が違います。下の写真は、ミネソタの田舎にある農業組合の建物内で行われていたオークションの風景です。普段は牛や馬などの品評会が行われているという建物内も、オフシーズンの冬になるとこのとおり、カントリー・アンティークの競り市に変身します。

 たまたま新聞の告知欄でこのオークションの存在を知った私とカレンは、約1時間半のドライブを経て、雪一色の景色が広がる会場に辿り着きました。午前中は出品物のインスペクションの時間。手渡された解説書をもとに品定めに入ります。ここで出ていたものは大半がアメリカン・カントリーの骨董で、その昔、塩やバターが入っていたストーン・ウエアの壷やドライシンク(木製の流し台)などが私たちの目を引きました。しかし、それら出品物は、一つひとつの単体で競りに掛かるわけではありません。大半はロットでの入札ですから、はたしてロットで出品されているものにどうやって値をつければいいのか。その計算に戸惑う一般客は、業者の目利きに敵うはずもなく、なかなか落札までには至らないのが現状です。お宝を適正価格で落とそうとするには運と相場の知識と計算力の3拍子が揃わなければ、結局は高値で競り落としてしまう……なんて、とんだアクシデントに見舞われてしまうのですから、オークション参加と一口にいっても、なかなか難しいのです。

エナメルウエアに古いガラス瓶、キッチンツール等がロットで番号付けされて並びます

写真左手は19世紀前後のストーンウエア。右手は会場の主催者・Auctioneer(競売者)

 さて、日本の骨董の競り市は業者さんの寡占状態だとか。一般の人たちは入れないと耳にします。かつてのアメリカも同じだったそうです。今は一般人も参加できますが、やはり業者さんは一般人の入場を嫌っているのではないかといった印象が拭えません。その理由は、一つは安定した価格で競り落とすことができなくなるからなのですが、適正価格を知らない一般人がどんどんと値を吊り上げ、暴走した価格で競り落としてしまうと当然、業者の出る幕などありません。ディーラーの間には仕入れ値というものが歴然と存在します。にもかかわらず、それを上回る競り合いになってしまえば、彼らは市場(マーケット)が荒らされたような感覚に陥るのでしょう。
 私たちが普段参加するオークションハウスでも、顔見知りのディーラーさんがさっと会場を見渡しただけで、一般人参加の多寡を見て取るやいなや、「きょうは(参加を)やめておくよ」と会場を後にした姿を何度か目撃しました。また会場で「きょうは、西海岸(あるいは東海岸の場合も)からのディーラーが買い付けに来ているよ」とコソコソ話が広がった途端、「ああ、じゃあ、きょうは見るだけだな」と地元のディーラーたちが鼻白む姿も見かけたことがあります。理由は、西海岸や東海岸のレートで価格を吊り上げられてしまうと、中西部価格の仕入れが成り立たないからなのでしょう。オークション・ハウスの舞台裏には様々な思惑が渦巻いているのです。
  まあまあ、そう言わずに、皆さん、仲良くしましょうよ、とはいかないのがこの世界のさだめなのかもしれませんね。現実は非常にシビアです。

ジャンクジャンクドットコムにとってのオークション七不思議

 

 さて、右手の写真は私たちが普段かよっているオークションハウスの競り光景です。この競売場はここ数年でぐんと力を付けてきたせいか、掘り出し物やお宝への遭遇率がとても高く、他のオークションハウスを圧倒的な勢いで押さえて、一番活況を帯びています。(写真一番奥右手に豆粒サイズで見えているのがこのオークション・ハウスの主催者です)

 このオークションハウスではこれまでジャンクジャンクドットコムも幾度となく貴重な骨董品を競り落としてきました。が、未だに手が出ない骨董がいくつかあります。一つはネイティブ・アメリカンのアンティーク。ビーズで作られた衣装やブーツ、そして同じくネイティブ・アメリカンのバスケット(籠)などがそれですが、これがまた高い。あまりの高額ぶりに、とてもじゃないけれど、札を上げる勇気がありません。ワン・サウザンド、トゥー・サウザンズと競売人が叫んでいる値段が高いのか安いのか、それさえも分からないのです。ただ分かっていることはネイティブ・アメリカンのプリミティブな手工芸品は、ここアメリカには金額に糸目を付けないコレクターが、確かな数で存在するということぐらい……。

 もう一つよく分からないジャンルは日本の骨董品です。古伊万里に薩摩焼、浮世絵、船箪笥に根付といった多様な和骨董が、ときどき競りの舞台に上がります。だけど悲しいかな、その真贋を見る鑑定力が私たち二人にはありません。ただ知っているのは日本の骨董商の人々が日本から海外に流出したものをアメリカに買い付けに来るというニュースを耳にするぐらい。それなのに目の前にあるモノの相場が分からず、いつも指をくわえながら日本のお宝が落札されていくのを見守るだけなのですから、もしそれらが本物であればまったく情けない限りです。

競り市当日のスケジュール

 通常、私たちが参加するオークション・ハウスでは約500点の出品物が用意されています。そのほとんどがロットで並びますので実数にすると膨大な数の骨董品です。競りの開始時間は午後6時から。それに合わせて私たちの当日のスケジュールはたいてい、次のように始まります。

 午後5時には仕事を終えたカレンから「今からオフィスを出るよ」という電話が鳴り、自宅で待機しているマツオは身支度を終えてガレージへ。車のエンジンをかけ始めたところにカレンが合流。双方が車に飛び乗り、きっかり6時に会場へ到着します。前日のインスペクションでそれぞれがお気に入りのモノを見つけていますので、それらがきちんと会場に備わっているか確認してから(なんと前日に盗難されてしまっていることもあるのです!)番号札を持って着席。いよいよ競りがスタートします。軽い緊張感が走る序盤過ぎた頃には、その日の盛り上がり具合ーすなわちきょうの競りが安定しているか、それとも高値に傾いているかーといった案配をチェックしながら、私たちは自分たちが競り落としたいモノの順番が来るまで、それぞれの世界に入っていきます。マツオは持参している文庫本を広げて読書に没頭し、一方、カレンは膝の上でパソコンを開いて、オフィスから持ち帰った仕事をパコパコとキーボードを打ちながら片付けていき……。そうこうするうちに私たちそれぞれが競り落としたいモノが表舞台へと登場します。気合いを入れて“いざ、勝負”へ。競りのかけ声に合わせて番号札を挙げていくのですが……。結果は、予想値を大きく下回って落札できることもあれば、あまりの高値にため息をつきながら他の人が落としていくのをひたすら眺めていることもあります。終了は夜の10時前。その日、落札したお宝があれば支払いを済ませて、倉庫で落札品を受け取り、いざ帰宅へ。途中、お気に入りのレストランに立寄り、遅めの食事を取って、お疲れさま! オークション参加の夜はこうして深けていくのです。

 さて、次回のコラムではオークションの入札システムについて解説しましょう。またジャンクジャンクドットコムが初めて手に入れた落札品もご紹介しつつ、普段、オークションでどのようなモノに出会えるのか、そしてオークションでお買い得のアンティークとはどういうものなのか、競り合い上の注意点は何かといった内容に触れていく予定です。どうぞ、次回もよろしく、おつきあいくださいませ。

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Past Columns - 過去コラム
2003.05 - Introduction
2003.06 - My Antiques
2003.12 - Our wood work
2004.01 - Antique shops in Minnesota
2004.02 - Freezing winter of Minnesota 
2004.03 - The treasure hunting season is coming
2004.04 - Going to Europe 1
2004.05 - Going to Europe 2
2004.06 - Back to Japan
2004.09 - Lu Basket
2004.10 - Buying Antiques in France
2005.01 - Treasure Hunting in Auction House
2005.08 - Treasure Hunting in Auction House Part 2

 

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